『白い紙/サラム』 シリン・ネザマフィ
1979年、イラン・テヘラン生まれ。
神戸大学卒業そして同大学院を修了し、
2009年の出版当時は、
システムエンジニアとして日本の電機メーカーに勤める
イラン人女性による小説2編。
「サラム」は、
自身の入管等での通訳の経験から、
アフガニスタン難民の少女と
その周囲の人々を描いた小説。
2006年に、
留学生文学賞を受賞している。
「白い紙」は、
イラン・イラク戦争下での
学生同士の恋を描いた青春小説(wikipedia)。
これは2009年に、
第108回文學界新人賞を受賞している。
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どちらもすごく読みやすい小説。
だけれども、
描写される情景はとてもリアルで、
厳しい現実をついている。
イランに行き、歩いた町の様子が思い出され、
本に出てくる光景に重なり、
刑務所に通訳を派遣する仕事をしていたことが、
本に出てくる弁護士や通訳として仕事をする「私」に重なる。
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本の内容とは関係ないが、
ふと気になった文章がある。
ペルシャ語の挨拶、「サラム」について。
" もとはというと、降伏、救い、平和という意味も持つ単語なんです。
昔は戦争で、負けた側が降伏の象徴として、
大声で「サラム」と叫んでいたらしい。
「サラム」と言われた側が「アッサラムアレイコム」
つまり「あなたにも平和を」と返事して、
初めて降伏が成立したそうです。
それから「サラム」がそのまま挨拶になってしまって。
今は誰も「平和」という意味では使っていませんけど。"
なるほどと思ったが、
たしかアラビア語の挨拶は、
「アッサラムアレイコム」ではなかったか。
今では、どちらも、
「こんにちは」にあたるこの表現。
何か、歴史的な背景があるのだろうか。